アルバムからのファースト・シングル。
2月14日、アダルト・コンテンポラリー・チャート向けにシングル・カットされました。しかも、ロバートのメイン・ヴォーカル・シングルは"TAKE ME BACK TO CHICAGO"以来、実に28年振りという戦略を張ります。
ところが、本曲はシングル・バージョンと銘を打っているものの、実際、各ラジオ局に配布されたプロモーション用のCDシングルも全くこれと同一のものなのかについては判然としません。というのは、ストリーミングに供されていた曲は、そのほとんどが13曲目のアルバム・バージョンの方だったからです。しかも、聞けば、配布されたプロモ用シングルとの間には表記上若干の分数の違いが認められるというのです。この辺りの扱いは、残念ながら、結局よく分かりませんでした。
なお、13曲目のアルバム・バージョンとの違いは、ホーンが使用されていないことと、後半の≪Feel......≫という部分に係るコーラスがないことなどにあります。
シカゴのシングルはとにかく久々。確認できるだけでも、98年の"ALL ROADS LEAD TO YOU"以来。しかし、このときは主要な分野にはチャート・インしませんでした。チャート・インの記録ですと、その前年97年の"THE ONLY ONE"まで遡ります。こちらはアダルト・コンテンポラリー・チャートでしたが、第17位まで上がっています。なお、この両シングルは日本でもマキシ・シングルとして当時日本盤がリリースされました。
ちなみに、本曲"FEEL (Hot Single Mix)"のチャート成績は、以下の通りです。
ビルボード、アダルト・コンテンポラリー・チャート
「Adult Contemporary」 最高位第19位
「Hot Adult Contemporary Tracks」 最高位第19位(4月22日付)
ラジオ&レコーズ、アダルト・コンテンポラリー・チャート
「AC」 最高位第20位(4月14日付)
ところで、この"FEEL"がファンの前に初めて紹介されたのは、2005年9月23日、ラスベガスのスターダスト公演においてでした。アース・ウィンド&ファイヤーとの2年にわたるジョイント・ツアーが一息つき、このラスベガスでは、シカゴの単独公演が再びスタートします。当然、『XXX』からの曲も聴かれるだろうと多くのファンが期待していたところでした。しかし、4日連続公演の2日目までは、従来通りのセットリストに終わり、ファンを失望させていたのです。ところが、3日目にして、突如として、この"FEEL"を演奏したのです。もちろん、ホーンありです。予告なしの演奏にオーディエンスは度肝を抜かれ、まさに興奮の坩堝状態。レパートリーが平板化していた時期だけに、この驚きは想像以上に大きかった模様です。
私自身、この曲に最初に接したときは、もう涙、涙・・・で話になりませんでした。「これが、自分が長年追いかけて来たバンドの新曲なんだ!」と。「まさにシカゴのファンで良かった」と思った瞬間でした。
さて、本題の曲の印象です。
まず、作者は、ダニー・オートンとブレア・デイリー。このうち、ダニー・オートンは、下記写真の中央の人物だということです(ドウェイン・ベイリーの情報による)。この2人は、『XXX』が発売された直後にリリースされたラスカル・フラッツの最新アルバム『ME AND MY GANG』にも、曲を提供しています。
出だしは、ロバート・ラムのヒップホップ調の語り口。これには一瞬戸惑うほどの衝撃を覚えました。近年のロバートのソロ作品でもここまでのものはありませんでしたから。
しかも、内容面においても、通り一遍のラヴ・ソングとは一線を画しています。私は、ヒューマニズムあふれる楽曲だと感じました。海外のファンの意見も全く同じです。つまり、歌詞を見ると、愛がどうのこうのというよりも、むしろ、何かこう勇気付けられてくるようなものがあるのです。
≪キミのハートは冷え切っている。心も麻痺している。キミは今の自分が好きじゃないんだね。キミはゲームをしているのさ。それも、十分すぎるほどにね≫。
≪キミはハッピーなのか、悲しいのかすら分からない。善悪の区別さえもつかない。感覚がないのかい?自分の感覚をないがしろにしちゃいけないな≫。
≪頭で考えるのは、もうやめにしよう。その代わりに、ハートを使うんだ。やってごらん!きっと気に入るはずさ!≫。
たしかに、無味乾燥な恋人を皮肉ったようにも映りますが、その奥底には、無機質な現代人へのアンチテーゼが秘められているとさえ思われてくるのです。未来は明るいんだよ!生身の人間らしく行こうよ!といった人間ならではのぬくもりを感じずにはいられないのです。
まさに、新世紀のシカゴの冒頭を飾るに相応しい傑作です!
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