オリジナルはビル・チャンプリンのソロ第4弾『THROUGH IT ALL』に収録。
では、なぜ、この曲がサンズの曲として再録されたのでしょう?
ビルの上記ソロ・バージョンは、94年に製作されています。この曲は、もともと、あるハッキリとしたメッセージを含んでいたのでした。
≪キャンドルを灯して、銃を置くんだ。そうしなければ、愛なんてやって来ない≫と。つまり、これは、戦いをやめさせるための歌です。少なくとも、私にはそう映りました。
しかも、見様によっては、信仰やナショナリズムのために命を落としていく兵士たちへの鎮魂歌とも受け取れますし、あるいは、彼らを指揮する指導者たちへの怒りあふれる痛烈な批判にも映ります。しかし、それをアコースティック調で重々しく語るように歌って行くので、余計、心に訴え掛けてくるものがあります。
本アルバムが発表された94年といえば、かの湾岸戦争(91年)が終わってから3年目に当たります。この間にも、ビルは『BURN DOWN THE NIGHT』(92年)をリリースしていますから、当初、私は、湾岸戦争の影響がこの曲に直接反映されたといえるかは微妙なところだと推考していました。
ところが、2006年9月、ビル・チャンプリン本人が、この曲に関するコメントを自身のフォーラムに書き込んでくれたのです。その後、2010年8月28日にも同様のコメントを投稿してくれています。それらによりますと、やはり、この曲は、1991年の湾岸戦争のあたりに書かれ、しかも、サダム・フセイン・タイプの独裁者を指標として書かれたものだそうです。なるほど、これで話がつながりました。
他方、ビルの叫びも空しく、正義を振りかざす戦いは、昨今も一向に止む気配はありません。
そして、今回、このサンズの『HIP LI'L DREAMS』が実際に録音されたのが、4年前の2001年と言われています。同年9月11日には、例の同時多発テロがアメリカを襲いました。続いて、その報復のため、アメリカはイラクに派兵します。
本アルバムの録音は、まさに、こうした時期と重なっていたのです。そこで、あらためて、上述したビルのメッセージがアルバムに込められたわけです。
ソロでもサンズでも、アルバムの最後にこの曲を持って来たのは、決して偶然ではないのです。
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