ディスコグラフィ   シカゴ(05)

CHICAGO (1972/7)
CHICAGO

曲目 シカゴV
シカゴ
総評

試聴♪

Produced by JAMES WILLIAM GUERCIO

曲目
01 A HIT BY VARESE バレーズに捧げる歌
02 ALL IS WELL 今は自由さ
03 NOW THAT YOU'VE GONE お前が去って
04 DIALOGUE (PART I) ダイアログ(パート1)
05 DIALOGUE (PART II) ダイアログ(パート2)
06 WHILE THE CITY SLEEPS 街が眠りについて
07 SATURDAY IN THE PARK サタデイ・イン・ザ・パーク
08 STATE OF THE UNION 俺達のアメリカ
09 GOODBYE グッドバイ
10 ALMA MATER 俺達の見た未来
<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
11 A SONG FOR RICHARD AND HIS FRIENDS
(Studio Version, without Vocals)
リチャードと彼の友人達に捧げる歌
(スタジオ・バージョン)
12 MISSISSIPPI DELTA CITY BLUES
(First Recorded Version, with Scratch Vocal)
ミシシッピー
(ファースト・レコーディッド・バージョン)
13 DIALOGUE (PART I & II)
(Single Version)
ダイアログ(パート1&2)
(シングル・バージョン)
総評

01

A HIT BY VARESE
バレーズに捧げる歌

ROBERT LAMM

02

ALL IS WELL
今は自由さ

ROBERT LAMM

03

NOW THAT YOU'VE GONE
お前が去って

JAMES PANKOW

04
DIALOGUE (PART I)
ダイアログ(パート1)

ROBERT LAMM

≪dialogue≫という言葉が示すように、まさに、この曲は対話形式で出来ています。そして、発表当時から、テリー扮する過激派と、ピーター扮するノンポリ学生の対話だという定説があります。

たしかにそうなんですが、歌詞のみを純粋に見ると、当の過激派は暴力による現状打破を狙うのではなく、むしろ、≪idea≫、つまり、物事の考え方に力を認めています。この辺は、自らも過激な物言いをするものの、やはり、インテリ系であるロバートらしい過激度だと思いました。

しかも、興味を惹かれるのは、悲惨な社会状況に思い悩む過激派が、ノンポリ、つまり、何のポリシーも持たない学生に対して、今の状況をどう把握しているのか尋ねているだけで、とくにけしかけているわけではないところです。また、尋ねながら自らを安心させようとする不安な気持ちを表現している点も見事です。

最後に、過激派の方が、≪ありがとう。おかげでホッとしたよ。来るべく状況に困惑していたんだ≫と言いますが、これがおよそ真意でないことは明らかでしょう(と思う)。

しかし、ここに出てくるノンポリ学生の楽観的な考え方は、ある意味達観したところがあるようにも映ります。当時はヤワな考えとして揶揄(やゆ)されたんでしょうけれど・・・。

いずれにしろ、ロバートのバランス感覚が散りばめられた秀逸作となっています。

05
DIALOGUE (PART II)
ダイアログ(パート2)

ROBERT LAMM

06
WHILE THE CITY SLEEPS
街が眠りについて
ROBERT LAMM

07
SATURDAY IN THE PARK
サタデイ・イン・ザ・パーク
ROBERT LAMM

7月4日というアメリカの独立記念日を回想する、シカゴの代表曲。ロバートのお気に入りの1人、キャロル・キングを彷彿とさせるイントロに自然に体が反応します。ちなみに、この曲は、ニューヨークのセントラル・パークでの記念祭の模様をモチーフとして作曲されてるそうです。

なお、以前から盛んに議論の対象となっていた、この曲中に出てくるイタリア語らしき歌詞についても、27作目のベスト盤『シカゴ・コンプリート・ベスト』の歌詞カードにより一応の決着がついたとみていいようです。なお、このベスト盤の発売後、初出の『シカゴV』も再発されましたが、同様の記載がされています。それらの詳細についてはこちらをご参照ください。

このシングル"SATURDAY IN THE PARK"は、最高位が第3位でしたが、初のミリオン・セラーを記録します。このとき1位となるのを阻止したのは、マック・デイヴィスの"愛は心に深く"と、スリー・ドッグ・ナイトの"ブラック・アンド・ホワイト"でした。また、同時期に発売された5作目のアルバム『シカゴV』は、グループ初の全米NO.1を獲得します。

この頃のバンドを巡る状況としては、段々とシングルに重点が置かれるようになってきました。アルバムもはじめて1枚組で登場し、1曲ごとの演奏時間も短くなっています。また、作風もこの"サタデイ・イン・ザ・パーク"に代表されるように、ポップ・センスがさらに洗練化されています。ただ、そのような傾向を意図したことはなく、また、メンバー間でもかなりの葛藤があったようです。しかし、結果として、この曲ならびにアルバムを契機に、以降、チャート上で怒涛の快進撃を続けます。とくに、その週のチャートの初登場最高位曲を意味するホット・ショット・デビューがこれほど多いのは尋常ではありません。いかにファンの期待が大きかったかが数字として残っているわけです。まさにシカゴの第1時黄金期の幕開けです。

Q&A 歌詞に関する疑問
08
STATE OF THE UNION
俺達のアメリカ

ROBERT LAMM

09
GOODBYE
グッドバイ
ROBERT LAMM

10
ALMA MATER
俺達の見た未来
TERRY KATH

<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
11
A SONG FOR RICHARD AND HIS FRIENDS
(Studio Version, without Vocals)
リチャードと彼の友人達に捧げる歌 (スタジオ・バージョン)
ROBERT LAMM

作者のロバート・ラムは、4作目『シカゴ・アット・カーネギー・ホール』(71年)の収録対象となった71年4月のニューヨーク公演において、この曲のことを「a brand new song (=最新曲)」と紹介して演奏しています。また、翌72年6月には、日本公演でも披露し、この模様は日欧向けの『ライヴ・イン・ジャパン』(72年11月)に収録されています。つまり、これらはすべて“ライヴ・バージョン”という形でした。

この経過をたどって見ると、曲自体は、少なくとも71年には出来上がっていたと考えられます。

そして、このたび2002年8月に再発された5作目『シカゴV』(初出72年7月)に収録された“スタジオ・バージョン”は、71年9月に録音が行われています。すなわち、カーネギー・ホールでの公演の5ヶ月後ということになります。

しかし、残念ながら、この“スタジオ・バージョン”は、ボーカルが含まれていない、楽器演奏のみのバージョンです。とはいえ、初CD化であることに変わりはありません。ただ、上記“ライヴ・バージョン”よりも演奏時間が2分近く長い点が特徴です。

曲中、テリーの爆音ギターは、ファースト・アルバム『シカゴの軌跡』(69年)の"FREE FORM GUITAR"を思い起こさずにはいられません。

なお、ロバート・ラムのオフィシャルによれば、楽曲クレジットは72年と明記されています。

内容は、ときのニクソン政権に対する辛辣(しんらつ)な批判を含みます。とくに、べトナム戦争が泥沼化し、多くの生命が失われていく中で、ロバートはニクソンの即時辞任要求を歌詞に託したのです。つまり、タイトルにある“リチャード”とは、このリチャード・ニクソンを指すわけです。

かのウォーターゲート事件が発生、発覚し、一大スキャンダルとなったのが72年6月でしたから、この曲がニューヨークのカーネギー・ホールにおいて演奏された71年4月は、この事件よりも1年以上も前だったわけです。そして、ついに74年8月に至り、渦中のニクソンは大統領職を辞することとなります。

このニクソンの辞任劇は、ベトナム戦争での敗退および当のウォーターゲート事件を起因とする政治不信により意気消沈した多くのアメリカ国民を安堵させ、また、マスコミをして、こぞって「欠陥を併せ持ちながらも法治国家としての面目を躍如した、“制度の勝利”」と評価せしめたようです。

大まかに言うと、この70年代中期は、アメリカ全土が一種の癒されたい気持ちを共有するようになり、内省的または懐古的な風潮に見舞われることになります。そして、このような風潮は、シカゴの作風にも如実に反映していった、と見て妨げないでしょう。

なお、91年11月に、コロムビア時代の曲を集めたボックス・セット『グループ・ポートレイト』(91年)が発売され、この曲も収録されましたが、これは前述の『シカゴ・アット・カーネギー・ホール』の収録曲を、その前後を編集して収録したものと思われます。

12
MISSISSIPPI DELTA CITY BLUES
(First Recorded Version, with Scratch Vocal)
ミシシッピー (ファースト・レコーディッド・バージョン)
TERRY KATH

この曲は、72年6月の日本公演でも演奏され、日欧向けの『ライヴ・イン・ジャパン』(72年)に“ライヴ・バージョン”として収録されるなど、ファンの間でも早くからその存在が知られていた曲です。

しかし、スタジオ録音ということで収録されるには、実に77年発表の11作目『シカゴ XI』まで待たねばなりませんでした。

この再発盤『シカゴV』にボーナス・トラックとして付加されたスクラッチ・ボーカル・バージョンは、来日の1ヶ月前の72年5月に録音された、“とりあえず”的な色彩の強いスタジオ録音盤のようです(初CD化)。

とはいえ、バックのブラス・アレンジメントはこの頃にはほぼ完成域に達していたと言っていいでしょう。

『シカゴ XI』バージョンと比べると、本スクラッチ・ボーカル・バージョンは、ギターもボーカルもまだラフな感じで、デモ・テイクに近いと言えるかもしれません。事実、『シカゴ XI』バージョンでは、これにさらに磨きがかかり、あの印象的なギター・カッティング・イントロに発展していきます。また、歌詞も、本スクラッチ・ボーカル・バージョンではやや冗長に映る後半部分のフレーズが物の見事に洗練化・簡略化され、スッキリとします。

13
DIALOGUE (PART I & II) (Single Version)
ダイアログ(パート1&2) (シングル・バージョン)
ROBERT LAMM

この曲は、27作目『シカゴ・コンプリート・ベスト』(02年)に収録されたシングル・バージョンと同じようです。